ハリナシバチの飼育は、ミツバチに比べてずっと簡単です。刺されることがなく、遠心分離機で蜜を絞る必要もなく、花期に合わせて群を移動させる必要もありません。何年も飼っていて、巣箱にほとんど手を触れないご家庭も少なくありません。
ただし「簡単」は「何をしてもよい」という意味ではありません。最初の一年で死んでしまう群の大半は、同じ三つの失敗が原因で、しかもその三つはいずれも最初の一か月のうちに起こります。
ステップ1:巣箱を置く場所を選ぶ — 思っている以上に重要です
これはあとから直すのがいちばん難しい判断です。群が落ち着いてから巣箱を動かすのは、細心の注意を要する作業です。ハリナシバチは周囲の目印を頼りに巣門の位置を覚えるため、数メートルずらしただけで、外勤に出たハチの一部が帰り道を見つけられなくなります。
良い場所には四つの条件が必要です。
- 朝日が当たり、午後の直射日光を避けられること。東向きか南東向きが理想です。朝日が当たると群は早くから外勤に出ます。午後の強い日差しは巣箱を熱くし、ハチは採餌をやめて羽ばたきによる冷却に回らざるを得なくなります。
- 雨よけの屋根があること。閉め切った小屋である必要はなく、雨が巣門に直接吹き込まない程度の覆いがあれば十分です。
- 地面から少なくとも50〜80cm離すこと。鉄の台に載せるか、吊るします。地面に直置きするのは、アリ・シロアリ・湿気を招くようなものです。
- 静かで、巣門のすぐそばを人が頻繁に通らないこと。ハリナシバチは刺しませんが、絶えず邪魔をされると群は弱ります。
木漏れ日の差す木陰がいちばん適しています。何もないコンクリートの庭は避けてください。夏場、地面から照り返してくる熱は相当なものです。
ステップ2:種群を買う — 健康な群を見分けるポイント
写真だけで群を買ってはいけません。可能なら自分で蓋を開けて確かめ、少なくとも開けるところを売り手に動画で撮ってもらいましょう。
健康な群にはいくつかの特徴があります。
- 晴れて暖かい午前中、巣門をハチが絶え間なく出入りしていること。ぽつぽつと数匹だけ、では困ります。
- 門番のハチがいること。群に役割を分担できるだけの数がそろっている証拠です。
- 開けたときに蜜壺と花粉壺の塊がふっくらと詰まっていること。色は濃く艶があり、白いカビがないこと。
- 育児巣(幼虫を育てる区画)が整然と均一に積み重なっていること。まばらで欠けた部分のある育児巣は、群に問題がある印です。
この巣がどの母群から、いつ分蜂させたものかを、売り手にはっきり尋ねてください。誠実な養蜂家なら答えられます。巣にトレーサビリティのQRコードが付いていれば、ただ信じるしかないという状況にならず、系譜と記録を自分で確認できます。
分蜂したばかりの群は買わないこと
分蜂を終えたばかりの群は、蜂数を回復し巣の構造を作り直すのに数か月かかります。まだ弱っているところを買って遠くまで運ぶのは、二つの衝撃を続けて与えることになります。分蜂からどれくらい経ったかをはっきり確認し、三か月未満なら待つほうが賢明です。
ステップ3:最初の一か月 — 手をかけすぎないこと
新しく始めた方がつまずくのはここです。巣を持ち帰り、うれしくなって、毎日のように蓋を開けてしまいます。
やめましょう。
蓋を開けるたびに、ハチが何日もかけて塗り固めた樹脂の封を壊すことになります。移動したばかりの群は、飛行ルートの覚え直し、輸送後の巣の修復、育児巣の保温という三つの仕事を同時にこなしています。そこへ蓋の補修まで加わっては手に余ります。
最初の一か月の無理のない進め方です。
- 1日目:選んだ場所に巣箱を据え、巣門を開けたら、その場を離れます。蓋は開けません。
- 1〜2週目:午前中に、離れた場所から巣門を眺めるだけにします。出入りが安定していて、花粉を持ち帰る姿が見えれば順調です。
- 1か月目の終わり:初めて蓋を開けて点検します。数分で手早く済ませ、また閉じます。
ステップ4:日常の世話 — 実際はごく軽い作業です
群が落ち着いてしまえば、あとはほとんど観察するだけです。
- 毎週、巣門を確認します。2〜3分見れば十分です。出入りが安定し、後脚の両側に花粉をつけて戻ってくるなら、育児は順調です。
- 1〜2か月に一度、蓋を開けます。蜜壺、花粉壺、育児巣を確認します。
- 巣箱の脚まわりを片づけます。アリは最大の敵です。台の脚にグリスを塗るか、脚を水を張った器に立てておきます。
- 花の少ない乾季には薄い砂糖水を補助給餌してもかまいませんが、本当に必要なときだけにし、花が咲き始めたらすぐにやめます。
群をいちばん早く死なせる三つの失敗
庭で農薬を散布すること。これが第一の原因です。ハリナシバチは数百メートルの範囲で採餌します。隣家の散布だけでも群は弱ります。どうしても散布が必要な庭なら、日程を申し合わせ、散布当日は巣門を覆ってください。
蓋を開けすぎること。先ほども述べましたが、初心者にいちばん多い失敗なので繰り返します。
蜜を採りすぎること。群は雨季と花の少ない時期を越すために貯蜜を必要とします。蜜壺を空にするのは、群を飢えに追い込むのと同じです。最初の一年については、率直に申し上げます。採蜜はしないでください。まずは群に蓄えさせ、強くさせることです。
蜜が採れるまでどれくらいかかるか
群が健康で蜜源にも恵まれていれば、少量の蜜が採れ始めるのはたいてい一年目を過ぎてからです。一巣あたりの年間収量はごくわずかですが、これはこの種の性質であって、飼い方が下手なせいではありません。
収量の多さを期待してハリナシバチを飼うと、必ず失望します。けれども、自家用に安心して使える蜜がほしい、ハチの受粉で果樹の実つきをよくしたい、静かな趣味がほしい——そうした目的であれば、とてもよく合います。
次の段階へ:増殖のための分蜂技術。現地で指導を受けたい方は技術移転パッケージをご覧ください。
